ブロックチェーン2.0。金融分野以外への技術の応用

経済産業省は2016年4月、「平成27年度 我が国経済社会の情報社・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)」という報告書を発表しました。
同報告書では、ビットコインなどの価値記録の取り引きに使用されているブロックチェーン技術を取り上げ、中央集権型システムに比べて、以下の点で優れていると指摘。IoT(Internet of Things)を含む、多様なジャンルへの応用が期待されているとして、「フィンテックの次」の技術として位置付けています。

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンの特徴

A. 改ざんが極めて困難である

特定のノード(ビットコインに参加している情報端末)が、中央の取引台帳で管理されているのではなく、分散型ネットワーク上で、全てのノードが同一の取引台帳を共有しています。台帳に新たにデータを追加するには、その情報をネットワーク上の全てのノードが共有し、各々のノードは、その取り引きが正しいか否かを確認します。この確認作業は、ブロックチェーンで定められた計算方法によってノードが行い、作業が完了すれば新しい台帳が追加される事になります。それらの記録が時系列でチェーン上に繋がっていく事から、ブロックチェーン技術と呼ばれる事になりました。誰かがデータの改ざんを行おうとするには、承認された取引記録を一つ一つ改ざんしていく手間が必要になります。データ改ざんのためのコストと手間を考慮すると、経済的に割に合わない結果となるため、それが「改ざんには強い」とされている所以です。

B. 「実質ゼロ・ダウンタイム」なシステム

ブロックチェーン技術は、P2Pネットワークと呼ばれる分散型ネットワークを利用して台帳への記録を行っています。分散型ネットワークは、中央サーバを設置せず、ネットワーク参加者同士で台帳を共有するため、参加者全てのコンピュータが停止しない限り、システムダウンは起こりえないとされています。

C. 「安価」に構築可能

分散型管理による取り組みにより、低コストでシステムダウンしにくく、かつ、不正悪用されにくい台帳管理システムを構築する事が出来ます。これにより、金融分野にとどまらず、様々な業界で活用出来る可能性を秘めており、あらゆる研究や実証実験が行われています。

ブロックチェーン技術に関するサービス事例

ブロックチェーン 世界
経産省は、「あらゆる産業分野における次世代プラットフォームとなる可能性をもつ」ブロックチェーンを、次世代の技術として熱い視線を浴びせる一方で、「主導権を海外企業等に握られる恐れがある」として、ブロックチェーンの研究・実証に後れを取ることに危惧を抱いてもいます。
報告書では、「海外では大企業等を巻き込み、様々な分野での実証が展開されつつある」としながらも、「国内では研究発表や実証で企業の動きは徐々に活発化して」いるとして、一定の評価をしています。

国内外の各社の取り組み

・R3 CEV社
世界各国の42社の金融機関が参加するコンソーシアムを主導しており、参加している企業群によるPrivate Distributed Ledgerを構築、複数の実証実験を実施中。
・NASDAQ
ブロックチェーン技術を応用した未公開株取引システム「NASDAQ Linq」を発表。
・Linux Foundation
ブロックチェーン技術を活用した共同開発プロジェクト「Open ledger」プロジェクトを発表。オープンソース分散型台帳(Distributed Ledger)
フレームワークとその開発者の育成を行うとしている。
・NTTサービスエボリューション社
ブロックチェーン技術を活用したコンテンツ利用許諾管理に関する研究結果を発表。手軽な映像利用許諾管理技術が求められている中でのソリューションとしての位置付け。
・野村総合研究所
証券業務でのブロックチェーン技術の利活用に向けた実証研究を実施してきており、Dragonfly FinTech、住信SBIネット銀行と協業し、適用シーンの具体化を推進するとしている。

ブロックチェーンの技術展開が有望な事例

ブロックチェーンの将来
更に経産省は、「ブロックチェーン技術の展開が有望な事例と市場規模」というリポートの中で、「ブロックチェーン技術による社会変革の可能性」を取り上げ、幅広い分野へ影響を与える可能性があると指摘。5つの事業分野に絞って、市場規模と共に事例について述べています。
ここでは、市場規模順に事例について見ていきます。

① オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

市場規模=32兆円
事業分野:小売り・貴金属管理・美術品等真贋認証
現在の流通サプライチェーンにおいては、製造(川上)から卸(川中)、小売(川下)にわたって関与する多くの事業者間で情報が片寄る傾向にあります。サプライチェーンの各工程において流通する情報を、各管理者が逐次、ブロックチェーンに繋がっているシステムに入力する事で、各工程の管理者や関係者が閲覧できます。これにより、川上で分断された在庫情報や、川下に集中している商品に関する流通情報が共有されるため、サプライチェーン全体が活性化・効率化する事が期待されます。製造から流通過程での欠品や、贋物が紛れ込む可能性を低くする事が出来るため、貴金属や美術品及び薬品など、贋物が出回りやすい背品のサプライチェーンへの応用が見込まれています。

② プロセス・取引の自動化・効率化の実現

市場規模=20兆円
事業分野:遺言・IoT・電力サービス
IoTにおける、ブロックチェーン技術の応用も期待されています。現在のIoT分野では、システムを接続する機器を管理するセンターサーバなど、システム構築コストや、サイバー攻撃に対するセキュリティ対策が当面の課題とされています。各機器をブロックチェーンで接続し、分散型システムを構築する事で、中央管理サーバのコスト削減に貢献します。機器同士で予め取り決めた問題解決方法によって稼働させることで、外部からのサイバー攻撃に対処するとともに、セキュリティを向上させる事も可能になります。いずれは、事業者ごとに構築されたIoTシステムが接続され、膨大なネットワークが構築されていくでしょう。そして、各々の危機が同一ネットワークで接続され、各機器が収集するデータを一元化し、集約・処理する社会が実現するでしょう。集約したデータを自動で分析し、独自に状況に応じたコマンドを出すスマートコントラクトを導入すれば、巨大な自律分散型の組織が出現する事になります。
このような社会では、家庭のレストランの冷蔵庫で得られた野菜の消費状況や、スパーマーケットにおける在庫情報、気候などの情報を元に、農家における農産物の作付を最適化する事が可能になるでしょう。
また、自動車同士を接続する事で、随時リアルな交通情報を共有し、各社の走行状況を最適化。交通渋滞の解消にも、繋がるでしょう。

③ 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

市場規模=13兆円
デジタルコンテンツ・チケットサービス・C2Cオークション
遊休資産の稼働率のほかに、入場券、客室、レンタカー、レンタルビデオ等の利用権限の管理効率化が実現します。
C2C(消費者同士)の取引が、現在のシェアリングエコノミーにおける、プラットフォーム事業者を介在させずに行われる環境が構築されるでしょう。現在、シェアリングエコノミーの有望株と言えば、「民泊」や「カーシェアリング」が挙げられます。これらのサービスでは、金銭取り引きや利用者同士の信頼性の問題から、消費者と消費者との間にプラットフォームとなる事業者が介在しています。ブロックチェーン技術の利用により、消費者の信頼性や取り引きの真正性に向上すれば、消費者同士の取り引きが盛んになり、コスト削減にも繋がります。利用者は、より廉価なサービスを享受する事が出来、シェアリングエコノミー文化が大きく発展する切っ掛けにもなるでしょう。

④ 権利証明行為の非中央集権化の実現

市場規模=1兆円
土地登記・電子カルテ・各種登録(出産・婚姻・転居)
行政においても、ブロックチェーン技術の活用が進みそうです。ブロックチェーンの特色である「改ざんの困難さ」「透明性の高さ」を活かし、本人証明・確認、権利証明などの文書管理、パスポート発行、土地登記、特許権利などへの応用が期待されています。これまで、政府や自治体など、その権威を背景に行われていた証明及び登録管理機能が、今以上の透明性をもって、分散型システムに代替されていく事でしょう。それにより、届出管理等の、地方自治体による業務の減少といった、政府の業務負担減少をもたらすでしょう。

⑤ 価値の流通・ポイント化 プラットフォームのインフラ化

市場規模=1兆円
地域通貨・電子クーポン・ポイントサービス
ポイントが発行体以外との取り引きにおいても、利用されるようになるでしょう。そうなれば、ポイントが流通することで、通貨に類似した価値が生まれ、ポイント発行額以上の経済波及効果が期待出来ます。例えば地域通貨やポイントのような、法定通貨以外の価値情報のやり取りが盛んに行われるようになり、それらのサービスがブロックチェーンを通して接続されれば、巨大な価値情報ネットワークが誕生します。例えば、自宅で手に入れた地域通貨を、出張先の町のポイントに替えてサービスを享受するなど、これまでは限られた地域でのみ、利用されてきた仮想通貨が、全国どこででも、色々な形で利用されていく事でしょう。
更にリポートでは、ポイントサービスが預金や貸し出しに類似した機能を持つことで、信用創造機能を獲得し、日銀による景気対策以外の、民間企業による仕掛けが出来る可能性を秘めている、と報告しています。

最後に、政策への提言で締めくくっています。
すなわち、民間における実証実験や事業の支援や、政府も自ら実証していくことで、広くブロックチェーン技術の有用性を周知させる事になる、としています。

① ブロックチェーンを活用した新ビジネスの検証のための民間実証の促進と、成果及び課題の集積を行い、広く公開することで市場の発展を促す事。
Etc.地域限定ポイント、電子チケットサービス等の実証や、そうした実証を通じたSLA(Service Level Agreement)の策定等。

② 暗号分野など、既存の技術蓄積を生かしつつ、これまで不十分だったブロックチェーンの数理的、情報理論面からの検証を後押しする事。
Etc.大学等での研究拠点、研究者間のネットワーク構築。

③ 行政分野におけるブロックチェーン技術の導入を進める事で、行政の効率化、高度化を推進しつつ、率先垂範する事。
Etc.文書管理、特許、土地登記、投票、徴収、婚姻・出産届等。

④ ブロックチェーンの社会実装を円滑に行うため、必要に応じて規制等を見直す事。
Etc.消費税法←仮想通貨やポイントへの課税
資金決済法←国際送金
電子署名法←法的証拠能力の明確化等

 

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